所得に関する税制
オーストラリアの居住者(短期居住者を除く)は、原則として国内外で得られた所得に対し課税されます。税率は納税者の属性によって以下のように異なります。
- 個人は累進課税制度のもと最大47%(2%のメディケア負担金を含む)
- 信託は通常47%
- 会社は通常法人税率である30%
課税所得は、査定所得(assessable income)から 控除可能な損金を差し引いて計算されます。控除可能な損金には、事業を行う上で生じた費用、償却資産の減価償却費、将来の年度における相殺のために繰越しができる前年度以前の欠損金(全額相殺されるまで期限の制約なく繰越し可能)があります。ただし、事業損失とネットのキャピタル・ロスは区別されます。事業損失は、将来の年度の査定所得および利得と相殺するために繰越しができますが、ネットのキャピタル・ロスについては、将来の年度のキャピタル・ゲインとの相殺だけに使うことが許されます。欠損金の不正利用を防ぐために、会社や信託の前年度欠損金には特別な規則および制限が適用されます。
オーストラリア居住者(短期・永住を問わない)とならない非居住者は、通常、源泉徴収の対象となる配当、ロイヤリティおよび利子を除いて、オーストラリア国内を源泉とする所得にのみ課税されます。すなわち、非居住者は、国外源泉所得またはオーストラリアの課税対象資産ではない資産から生じるキャピタル・ゲインに対しては課税されません。
(オーストラリアでの滞在期間にかかわらず)税務上オーストラリアの「短期居住者」である、または「短期居住者」となる個人にも、同様の措置が適用され る場合があります。短期滞在ビザ保有者で短期居住者の要件を満たす個人は、国外源泉所得に対するオーストラリアでの課税は免除されますが、短期居住中に雇用または役務の提供により得た所得に関しては課税されます。
短期居住者による、非居住者たる貸付人に対する利子の支払いは、利子に対する源泉徴収義務の対象になりません。
外国企業がオーストラリアに支店(恒久的施設)を有し、かつ租税条約が適用される場合には、同恒久的施設から生じる利益は、同恒久的施設が本社その他の関連企業から独立して活動する別の事業体であるかのように、同恒久的施設に帰属するものとみなされます。外国企業は、恒久的施設に帰属する利益に関し、通常の法人所得税率でオーストラリアで課税されます。恒久的施設が事業において使用するキャピタル・ゲイン課税対象資産から生ずる利得についても、オーストラリアで課税されます。
外国企業がオーストラリアに恒久的施設を持たず、オーストラリアを源泉とする事業利益を得ており、かつ租税条約が適用される場合には、通常その事業利益はオーストラリアでの課税対象となりません。
キャピタル・ゲイン税
資産は、課税事象が発生し、キャピタル・ゲインやロスが認識された場合に、キャピタル・ゲイン税(CGT)の対象となります。1985年9月20日以前に取得された資産については、キャピタル・ゲインもロスも認識されません。一定の免税措置が適用され、また、様々なCGTロールオーバー(課税繰延べ)が認められています。ある取引に対して所得税とキャピタル・ゲイン税がともに課される可能性がある場合には、通常の所得税を優先させる規則によって、二重課税が排除されています。
キャピタル・ゲインは、(当年度または過去の)キャピタル・ロスと相殺され、そうして求められたネットのキャピタル・ゲインが当該年度の査定所得に算入されます。ネットのキャピタル・ロスが生じた場合には、その後の年度に繰越しが可能ですが、将来のキャピタル・ゲインとの相殺のみが可能です。
法人の納税者のネットのキャピタル・ゲインは、通常の法人所得税率で課税されます。12か月以上保有した資産については、個人納税者は査定キャピタル・ゲインの50%の減額を受けられることがありますが、法人納税者にはかかる減額措置は適用されません。
個人が居住者でなくなった場合(その時点でキャピタル・ゲイン税が課税される可能性があります)や、個人や事業体がオーストラリアの恒久的居住者となった場合には、キャピタル・ゲイン税に関する特則が適用されます。ただし、非居住者のキャピタル・ゲイン(ロス)は、一定のオーストラリアの資産に関してのみ認識されます。対象となる資産には、オーストラリアの課税対象不動産、オーストラリアの不動産の間接持分、オーストラリア国内の恒久的施設の事業資産、そしてそれらの資産を取得するオプションまたは権利が含まれます。
適格短期居住者が(オーストラリアの課税対象資産ではない)資産から得るキャピタル・ゲインやロスは、オーストラリアの税務上認識されません。ただし、オーストラリアにおける雇用または役務の提供に起因して得た株式やストック・オプションから得た利得は例外となります。雇用に基づく労務提供の全部または一部がオーストラリア国内で実施される場合、株式やストック・オプションの従業員割引は、割引によって得た利益の性質および発生時期、株式やストック・オプションによって得た利得、ならびにその他の要素を勘案して、一部のみ課税対象となるか、課税が免除されることになります。特定の資本性資産は、非居住者でもキャピタル・ゲインに課税されるオーストラリアの課税対象資産です。
2016年7月1日を発効日とする源泉徴収制度により、非居住者によるオーストラリアの課税対象不動産(居住用不動産を除く)の処分に、10%の源泉徴収税(源泉課税)が適用されています。
キャピタル・ゲイン税については、様々な形で課税繰延べが認められています。かかる措置は、特定の資産や代替資産にかかるキャピタル・ゲインまたはロスを繰り延べたり、無視する効果をもたらします。このような課税繰延べの一部は、一般的に所有持分の経済的継続性に基づく所定の要件を満たす組織再編を、促進する効果があります。株式と株式、またはユニットとユニットの交換や、企業分割に関する免税措置は、しばしば組織再編の重要な要素となります。
オーストラリアの多国籍企業およびその外国子会社(CFC)は、事業活動を行っている外国子会社の非ポートフォリオ株式(10%以上)の売買または処分に関して、一定の条件に従ってキャピタル・ゲイン税の減免措置が受けられます。
会社が支払う配当
インピュテーション方式により、オーストラリアの居住者である会社が支払う配当については、当該配当利益について法人レベルで既に支払われた税額に対応するインピュテーション・クレジットの税額控除を受けることができます。税額控除可能な配当を受け取った株主は、現金で受け取った配当と、これに付随するフランキング・クレジットの額を共に査定所得に含めなければなりません。この後、フランキング・クレジットと同額の税額控除を受けることができ、これによって株主が配当について支払う税額が軽減され、またはゼロになります。
一般論として、配当の支払先が個人、信託、パートナーシップ、退職者年金基金と関連事業体、生命保険会社、法人株主のいずれであるかにより、異なるルールが適用されます。
税額控除可能な配当を受け取った会社その他の法人納税者は、個人と同じ取扱いを適用することを義務付けられます。つまり、税額控除可能な配当については、それに付随するフランキング・クレジットの額を会社の査定所得に含めてから、フランキング・クレジット分の税額控除により支払法人税額を減額することとなっています。しかし、会社その他の法人納税者は、余った分の税額控除の還付を受けることはできません(ただし、状況によっては、余った分の税額控除額が税務上の繰越欠損金に振り替えられる可能性があります)。
居住者たる会社が非居住者たる株主に対して配当を支払う場合、税額控除を付すことのできない部分についてのみ、源泉徴収税を支払わなければならない可能性があります。つまり、非居住者たる株主は、インピュテーション方式の税額控除や還付を受けることができない代わりに、受領した配当のうち本来インピュテーション方式の税額控除が適用される部分については、配当源泉徴収税が免除されることになります。
源泉徴収税は、インピュテーション方式の税額控除が適用されない部分の配当の総額に対して課税されます。通常の配当源泉徴収税の税率は30%ですが、租税条約批准国の居住者に対して支払われる配当については、同条約に規定されている税率(通常は15%)が適用されます。
現在、導管外国所得(CFI: Conduit Foreign Income)制度が、オーストラリア法人が非居住者である株主に一定の配当を行う場合に適用されています。導管外国所得に該当する場合、配当は査定所得とされず、税額控除を受けられない配当部分については、配当源泉徴収税の対象外とされています。導管外国所得は、オーストラリアで通常、非居住者たる会社が課税されない海外での所得や利得に限定されています。例えば、海外支店収入、海外の非ポートフォリオ配当(少なくとも10パーセントの議決権を有する場合)、事業活動を行う外国法人の非ポートフォリオ持分の売却から得られる利得などが挙げられます。
オーストラリア企業の負債(デット)による資金調達
利子に対する源泉徴収税(IWT)は、オーストラリアの居住者が、オーストラリアにおける事業上の経費として、オーストラリアに恒久的施設を持たない非居住者である貸付人に対して利子を支払う場合に課税されるものです。また、かかる利子に対する源泉徴収税は、非居住者である借入人が、自己のオーストラリア支店の事業上の経費として、非居住者である貸付人に対して利子を支払う場合にも課税されます。
さらに、非居住者である借入人が、オーストラリアにおける事業の経費として、オーストラリア居住者の外国にある恒久的施設から借り入れた金銭に対して利子を支払う場合についても、源泉徴収税の支払義務が生じます。
支払われた利子については、その総額に対し、一律 に10%の税率が課せられます。ほとんどの場合、この税率は、租税条約によって影響を受けません。しかし、一部の租税条約は、外国の銀行や金融機関に対して支払う利子に関する免税措置を規定しています。支払いの性質を判断する際には、法定の負債/資本テストが使われます。
しかしながら、非居住者である貸付人が、オーストラリアに恒久的施設を有し、かつ利子が実質的にかかる恒久的施設と関係している場合には、かかる利子の支払いについては、オーストラリア国内で通常の査定によって課税され、利子に対する源泉徴収税の対象にはなりません。一定の公募債やグローバル債などに関する利子については、免税措置を受けることも可能です。
過少資本税制は、容認できる範囲の負債と資本の比率(ギアリング)に基づいて、利子やその他の負債に関する経費の損金算入に一定の制限を設けています。過少資本税制の目的は、オーストラリアの企業が、資本による資金調達と比較して、負債による資金調達の税制措置に過度に依存することを防止する点にあります。
この税制は、(支店を通じて)オーストラリアに直接投資する外国企業、外国資本が支配するオーストラリアの事業体、および支配下にある外国投資を外国で行っているオーストラリア企業に適用されます。この税制の下では、オーストラリア資産取得のための資金調達に使った負債が所定の限度を超える場合には、控除可能な負債にかかる損金算入が査定所得についてできなくなります。
外国会社に支払うロイヤリティ
特許権などのロイヤリティ(使用料)が、オーストラリアの会社から非居住者に支払われる場合、30%の通常税率、または租税条約が適用される場合には低い税率(通常は5~15%)の源泉徴収の対象となります。しかしながら、ロイヤリティの受益者が、恒久的施設を通じてオーストラリアで事業を営み、ロイヤリティの支払いが発生する資産または権利が実質的に当該恒久的施設に関連している場合には、当該ロイヤリティはオーストラリアでの査定によって課税されます。
源泉徴収課税制度は、非居住者による支払いのうち、ある種のカテゴリーにも適用されます。この制度の目的は、従前の源泉徴収のカテゴリーから除外されていた非居住者の特定のカテゴリーの査定所得を源泉徴収制度の枠内に取り込むことです。非居住者である事業体に対する支払いのカテゴリーは、源泉徴収の税率とあわせ、規則によって規定されています。最初の3つのカテゴリーは、カジノ賭博接待のための支払い(3%)、娯楽およびスポーツ活動のための支払い(通常税率)、および、建物、工場、設備の建設、設置または整備のための契約に基づく支払い(5%)です。
多国籍企業の租税回避
移転価格税制
国際的な移転価格(利益移転)の問題は、外国の事業体とオーストラリアの事業体または支店との間で取引される商品や役務につき独立当事者間価格ではない価格を付することにより、課税対象利益がオーストラリアの課税権の外に移転される場合に発生します。オーストラリアの事業体が外国事業体や外国特許に対して支払う対価、または海外本店とオーストラリアの支店間の取引価格が過大な場合、あるいは受領する対価が不十分な場合に、オーストラリアの税額が減少することがあります。低利子または無利子の貸付けも利益移転の効果をもたらす場合があります。
一定の状況下において、国税庁長官は、税務上、(広義の)国際的な契約に基づく資産や役務の供給や取得に関し、独立当事者間価格を擬制することができます。
納税者にとっては、許容される価格算定方法を補強する文書を適時に作成しておくこと(文書は関連する納税申告書の提出時までに作成される必要があります)がきわめて重要です。適時に文書を作成しないと、納税者は追加の課税査定がなされた場合に自らの主張を合理的に基礎づけることができないことになり、重大な不利益を被るおそれがあります。
多国籍企業租税回避防止法
2015年に連邦政府は、「多国籍企業租税回避防止法」(MAAL)を導入しました。MAALは、多国籍企業がオーストラリア国内に課税実体を置くことを回避しようとすることを防止するために策定されており、多国籍企業にオーストラリアでの経済活動に源泉のある利益に対して税金を納めさせるための法律です。MAALは、「大規模グローバル事業体(significant global entities)」(外国事業体または国際的グループの一員である事業体のうち、全世界での年間所得が10億豪ドルを超えているもの)に対して、以下の場合にのみ適用されます。
- 外国事業体がオーストラリアの顧客に一定の供給を行っている
- 供給に直接関連した活動がオーストラリアで実施されている
- それらの活動の一部または全部が、外国事業体に関係しているか商業上依存しているオーストラリアの事業体(またはオーストラリア国内の恒久的施設)により実施されている
- 外国事業体が、供給から所得を得ている
- その所得の一部または全部が、外国事業体のオーストラリア国内の恒久的施設に帰属していない
またMAALには目的テストが含まれています。このテストは、スキームの主たる目的がそのスキームとの関連で納税者に税務上の利益を取得させることである場合に充足されます。スキームがMAALの規定に反すると判断された場合、国税庁長官はそのスキームから取得された税務上の利益を取り消す権限を有し、回避された税金の100パーセント(加算要素が存在する場合には最高120パーセントに達します)を最高額とする重大な制裁金が課される場合があります。
迂回利益税
迂回利益税は、税務上の利益の獲得を主要な目的として海外の関連当事者と協調して実行されたスキームから得られた利益に対して40%の懲罰的な課税を行うものです。迂回利益税は大規模グローバル事業体にのみ適用され、海外の関連当事者と組成した取り決めを通じて利益を海外に迂回する行為を対象にするものです。
商品サービス税(GST)
オーストラリアのGSTは広範囲にわたる消費税です。オーストラリアのGSTは、以下のものに対して10パーセントの標準税率で課されます。
- 間接税圏(ITZ)(つまり、海外領土と一定のオフショア・エリアを除いた、オーストラリア領内)に関連して、事業者が対価を得て行う大半の供給 (例えば、物品、役務、情報、権利および不動産)
- 一定の物品の輸入
供給に対するGST
GSTが課されるのは、供給を行う事業体(個人、会社、パートナーシップおよび信託を含むと定義されています)がGST登録を行っている、またはGST登録が義務付けられている場合に限られます。一般的に、ITZとの関連がある供給に関する直近12か月の年間取引高、または今後12か月間の年間売上高見通しが、7万5,000豪ドル(非営利事業体の場合は15万豪ドル)を上回る場合に、事業体のGST登録が義務付けられています。
登録事業体による供給が対価を伴い、かつ供給がITZと関連している場合、当該供給は一般に課税対象となり、当該供給についてGSTの支払義務が生じます。当該供給に係るGSTは供給を行った事業体が受け取った対価(GST込み)の11分の1です。通常、課税対象となる供給に課されるGSTは、供給を行った事業体がATOに対して納付する義務があります。もっとも、「リバース・チャージ」(任意のリバース・チャージを含む)や非居住者による居住者たる代理業者を介した供給など、いくつかの例外があります。
GSTの対象を外国の供給者がオーストラリアの顧客に対して行うデジタル商品などの無形商品の供給および外国からの低価格品の供給にも拡大する特別なルールが導入されました。これらの供給を行う事業者は、オーストラリア内でビジネスを行っている実態がなくても、GST登録を義務づけれられる場合があります。
GST免税
GST免税(GST-free)と分類される供給(特定の健康関連品、食品、教育の供給、輸出、継続事業価値での事業の売却などを含みます)にはGSTが課されません。また、GST非課税(inputtaxed)の供給に関しても、GSTは課せられません。例えば、損害保険を除く金融サービスや、既存の住宅の販売や賃貸などがあります。
仕入税額控除
一定の場合、課税対象の商品や役務の供給を受給する事業体は、取得価格に含まれるGST相当額につき、仕入税額控除(input tax credit)を受けることができます。事業体は、通常の業務の過程で商品や役務を購入し、かつオーストラリアのGST登録をしているか、または登録が義務付けられている場合、仕入税額控除を受けることができます。しかし、商品や役務の取得がGST非課税(input taxed)の供給と関連するものである場合や、個人的または家庭用の性質のものであった場合には、その商品や役務の取得に関する仕入税額控除について、その登録事業体は制限を受けることがあります。
一般的に、登録事業体は、供給に課せられるGSTを月毎または四半期毎にATOに納付し、それを事業活動報告書(BAS)に記載する必要があります。同時に、登録事業体は、ATOから業務上の仕入価格に含まれるGSTに係る仕入税額控除の還付を受けることができます。
輸入品に対するGST
事業体が、ITZに国内消費向けの物品を輸入した場合には、その事業体は課税対象となる輸入を行ったことになり、GSTが課税されます。この場合、その事業体が、物品の所有者として、オーストラリア税関に対して申告を行うこととなります。ほとんどの場合、登録輸入業者は、課税対象輸入についてGST課税額に相当する仕入税額控除を受けることができます。オーストラリアに物品を輸出する外国企業が、オーストラリアでGST登録をする意図がない、または登録を義務付けられていない場合 には、オーストラリア国内消費向けの物品を実際に持ち込む者がこの仕入税額控除を受けられるように注意する必要があります。
使用者の重要な考慮事項
ペイ・アズ・ユー・ゴー(PAYG)制度という統一的な源泉徴収による分割払いの納税制度が、使用者から従業員への支払いを含め、多数の源泉徴収の支払いに適用されています。
従業員の賃金や給与から(源泉徴収税額を)控除することが義務付けられている使用者は、オーストラリア国税庁(ATO)でPAYG源泉徴収登録を行い、またGST登録をしている場合は事業活動報告書(BAS)により、GST登録をしていない場合は収入報告書(IAS)により、定期的に源泉徴収に関する義務についての申告を行わなければなりません。
加えて、商品や役務を受け取る企業はすべて、供給者が供給に関するインボイスその他の書類にオーストラリア事業者番号(ABN)を表示していない場合は、最高税率相当額にメディケア負担金を加えた金額を源泉徴収することが義務付けられています。ABNは、他の企業や、ATOその他の連邦政府機関との商取引で使われる、単一の識別番号です。短期間であっても、オーストラリアとの関係で供給を行う外国企業や、オーストラリアで事業を行う外国企業は、通常はABNの申請資格があります。
納税者番号(TFN)制度は、ABNを持たない個人納税者の給与や賃金、投資所得など一定の区分の所得に対する課税について適用されます。有効なTFNが提示された場合には、特定の源泉徴収税率が適用されますが、TFNの提示がないと最高税率とメディケア負担金の合計額で源泉徴収されます。
現在では大半の企業がPAYG分割納付金について毎月の支払いを義務付けられています。ただし、基本評価分納所得(基準額)で10億豪ドルに満たない中小規模事業体は毎月の納付義務を課せられません。
PAYG制度の下で、大半の事業体は法人所得税、フリンジ・ベネフィット税およびGSTを毎月支払い、その金額の申告は一般的にBASに記載して行います。
登録されている事業体の支店は、PAYG源泉徴収を行う支店として登録することが可能です。かかる登録を行った支店は、事業体の本体とは別個のBASを提出し、当該支店に関するPAYG源泉徴収に関する義務についての申告を行うことができます。
一般に、非居住者は、オーストラリアを源泉とする
(非課税所得や源泉徴収課税対象の所得以外の)所得があった場合は、年に一度、所得税の申告をすることが義務付けられています。この場合は、自己査定制度が適用されます。