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導入

オーストラリアの環境、汚染および開発計画に関する法律は、過去に大きな変化を遂げ、現在も大きく変化し続けています。あらゆる法域において、気候変動に特化した法律などの新しい立法がなされています。こうした新しい制定法や、行政当局の方針や運用の変化(特に法律に基づく規制の執行に関するもの)が相まって、この分野の法律が日常の事業活動に及ぼす影響は極めて大きなものになっています。

一般論として、環境、汚染および開発計画に関する法律は、すべて州・準州が管轄する分野であり、連邦法は限られた範囲で関係するに過ぎません。しかし、連邦法は次第に環境規制において重要な役割を果たすようになってきています。州や準州ごとの立法の違いがあると、それぞれの法律の解釈は大幅に難しくなります。

また同じ法域内でも、各種の承認要件間で、環境、汚染、開発についての考慮事項が、相当程度、重複する可能性があります。

ほとんどのオーストラリアの法域で、第三者による不服申立てを認める広範な不服申立て規定が存在します。これらの規定の中には、申立てに対する判断において幅広い利益衡量を行うものもあれば、判断対象を法的な誤りのみに厳格に限定しているものもあります。

オーストラリアで事業を取得する場合新規事業を開始する場合、適用される関連法令・政策・手続について把握し、事業に伴う環境や開発に関連する義務や責任を特定することが極めて重要になります

連邦法

連邦法は、国際条約に基づく国の環境保護義務を履行するためや、関連するプロジェクトが連邦の関与を必要とする場合に、執行されるのが通常です。例えば、事業活動が連邦の所有地で行われる場合や、国の環境に重大な影響を与えるおそれがある場合などです。

主要な連邦法である1999年環境保護・生物多様性保全法(EPBC法)は、主に、以下のように、「国の環境に重大な影響を与える」計画に適用されます。

  • 世界遺産
  • 国家遺産
  • 国際的に重要な湿地生態系
  • 絶滅危惧種/生態学的共同体として指定されたもの
  • 移住性がある種
  • 連邦の海域
  • 放射能に関する活動(ウランの採掘を含む)
  • 炭層ガス開発および大規模炭鉱開発による影響を受ける水資源

EPBC法は、環境、開発、遺産に関する問題も幅広く取り扱っています。

EPBC法上、取締役は、会社の行為に影響を与える立場にあり、法律違反を防止するための合理的な措置を講じず、かつ違反が行われようとしていることについて知っているか知ろうとせず、または過失により知らない場合には、法律違反について民事上の責任(または場合によっては刑事上の責任)を負う可能性があります。

計画が、先住民の遺産、放射能の安全性、特定の廃棄物の輸出入、または沖合での石油採掘に関連する場合にも、それに対応した連邦法が適用される場合があります。連邦法は、補充的な州法・準州法によりサポートされる統一的な基準を定める場合もあります(国家環境保護基準/危険物の運搬基準規則など)。

特定の事業や活動に対して連邦の環境法が適用される場合、連邦法は、関連する州・準州法に基づく義務に加えて、重畳的に適用されます。さらに、場合によっては、適用される基準値や指定基準が違うため、プロジェクトの環境面での考慮要素が、連邦法と州・準州法とで大きく異なる場合があります。もっとも、連邦と州が合同で計画の評価を行う場合もあります。連邦政府のワン・ストップ・ショッププログラムは、全国的な保護対象に適用される単一の環境承認プロセスの創設を目的とするものです。このプログラムは、事業者に対する承認プロセスを簡略化し、規制当局側のコストを削減することを目的としています。このプログラムは依然として実施途上であり、連邦と各州・準州との間の相互承認はまだ最終合意に至っていません。

州・準州法

州・準州は異なる環境、汚染、開発計画に関する法律、政策、手続を有しており、各州・準州によって規定の仕方や複雑性、重点に違いがあります。

環境、汚染、開発計画についての意思決定には、相当程度、裁量の余地があります。州・準州が意思決定を行う場合には、オーストラリアの他の法域の基準や決定を参照することが一般的で、特に当該法域の既存の政策やデータに不足がある場合に最もよく行われます。全体の法的枠組みに差異が存在するため、このような決定や基準の適用については、注意を払わなければなりません。

州・準州の環境保護に関する法律

環境犯罪

州・準州レベルの環境法には、様々な環境犯罪が定められています。これは、環境汚染を防ぐ一般的義務に基づく環境犯罪の場合もあれば、種の多様性や水・空気・土地に対する環境上の害悪を伴う特定の環境犯罪の場合もあります。「環境」の定義が拡張された結果、騒音、におい、ごみ、電磁放射線の発生といった快適性に関する影響についても、犯罪が成立することがあります。

すべての州・準州は、取締役または会社の経営に関与している者が環境犯罪について個人的に責任を負うとの規定を定めています。

このような環境法上の義務違反についてのみなし責任に対しては、被告は、法人の違法行為から生じる個人の責任に関する様々な抗弁を主張することができます。

許認可

環境法は、特定の事業または特定の活動を実施する事業について、環境規制当局からの許認可を要するものとしています。こうした許認可は、一定の制限の下、環境犯罪に対する抗弁として機能します。

環境への影響のアセスメント

すべての州には、環境保護を所管する法定の機関があります。これらの機関が与える許認可では、事業活動の方法が定められたり、条件を付すことによって事業者に一定の義務が課されることがあります。かかる条件には、例えば、物質の排出や放出の制限、許認可により課せられた環境基準の遵守についての保証金の支払い、モニタリング・公表、オフセットの提供、事業活動により排出される汚染物質の量を基準に計算された認可料の支払いなどを要求するものがあります。また、事業活動が、絶滅の危機に瀕する動植物、先住民/非先住民の文化遺産、水資源、廃棄物、有害化学物質、危険物などに影響を及ぼすかその可能性がある場合、州・準州の法律によって、より具体的な義務が課せられる場合があります。これらの州・準州の法律により、さらなる許認可が必要になる場合もあります。

新規の開発に関するインパクト・アセスメント(影響評価)の方法や内容は、州によって大きく異なります。開発の種類に応じて、地方自治体もしくは州政府レベルで、または特定の法定機関もしくは独立評価委員会により、アセスメントが行われます。一定の状況では、州レベルの代わりに(または州レベルに加えて)、連邦レベルでのアセスメントが必要になることもあります。

州・準州の汚染に関する法律

オーストラリアのほとんどの法域において、土地の汚染の報告、分類、管理、責任を負担する当事者に関する法律が既に導入されています。

一次的に責任を問われるのは、通常は、汚染の原因とみられる活動を行った者です。場合によっては、土地の所有者や占有者など、それ以外の者が、土地の汚染に対する一定の法的責任を負う可能性もあります(例えば、土地の用途の変更による汚染)。

このことは、土地の取得や、汚染の可能性のあるオーストラリアの土地を所有するまたは所有してきた企業の活動や、あるいは土地を賃貸する場合の契約上の義務に、影響を与える可能性があります。

土地が汚染されているかどうかは、その土地を特定の目的で使用するのに適しているかにも影響する可能性があります。そのため、汚染の調査、改善、監視、管理の義務(環境規制当局からの法的に強制可能な指令に基づくものを含む)が発生する場合もあります。

土地の賃貸借契約や売買契約に関しては、土地の汚染に関する懸念は、契約上の保証・免責やこれに関連する問題につながる可能性があるため、交渉の早期の段階から検討されるべきでしょう。

州・準州の開発計画に関する法律

土地の使用や開発に関する事業をオーストラリアで行う場合、開発計画法に基づく承認を受ける必要がある場合があります。州・準州の開発計画法は、開発、分割、建設と、それらの実施方法について規定しています。一定の公共事業やプロジェクト(プロジェクト固有の法規制がある場合)には、計画の承認の要件が免除されたり、制限されたりするものがあります。また、計画承認のプロセスは、文化遺産や先住民の遺産の承認に関する別個のプロセスと重複する場合もあります。

開発計画の承認を得るための要件は、土地の区分や事業の種類によって異なってきます。土地の所有者が区割り変更を開始することができる法域もあれば、州政府や地方自治体のみがそれを行うことができる法域もあります。

一般に、開発計画法では、決定がなされる前に、パブリック・コンサルテーションまたはアドバタイズメントの実施が必要とされており、一般市民がアセスメントに参加できるようにしています。アセスメントのプロセス上、審問や公聴会が行われることもあります。すべての州・準州で認められているわけではありませんが、第三者が裁判所などに対して不服申立てをする権利を有する場合もあります。

大規模インフラプロジェクトの開発計画の承認には、常に開発の実施・運営の方法を規制する条件が付されます。かかる条件により、拠出金あるいはその他の形での貢献(土地の提供や生態多様性オフセットの実施など)が必要となる場合もあります。したがって、開発計画の承認に付随する条件は、開発期間中さらにはその終了後にも、非常に大きな影響を及ぼす可能性があります。

環境デュー・ディリジェンス

オーストラリアで事業を取得する場合や新規事業を開始する場合、適用される関連法令・政策・手続について把握し、事業に伴う環境や開発に関連する義務や責任を特定することが極めて重要になります

また、環境、汚染、および開発計画などに関する法律から生じる潜在的なビジネス上のリスクや責任を把握することも、同じく極めて重要です。

適切なデュー・ディリジェンスを行うことは、事業に伴う義務・責任・リスクの洗い出しに役立ちます。

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