基本的な最低労働条件
すべての従業員は、フェア・ワーク法で定められている全国雇用基準(NES)と呼ばれる最低労働条件を享受する権利が与えられます。NES内容には以下のものが含まれます。
- 1週間の標準労働時間は38時間と「合理的な超過勤務時間」を限度とすること。
- 年間4週間の年次有給休暇(シフト労働者については年間5週間)
- 年間10日間の有給個人的(疾病休暇を含む)/介護休暇。さらに、追加で2日間の無給介護休暇および2日間の有給忌引休暇
- 両親に対し、出産時、または子供を養子にする際に、52週間の無給育児休暇。さらに両親のどちらかが追加で52週間の無給育児休暇を申請することもできる
- 未就学児または18歳未満の障害児の親または介護者は、柔軟な雇用形態を要請することができる。これらは従業員が少なくとも 12か月間継続して勤務していることが要件であり、合理的なビジネス上の理由があるときには認められない場合もある
- 関連する連邦法または州法に基づく長期勤続休暇
- 従業員が、陪審員や緊急時のボランティア等の
「適格社会奉仕活動」に従事している場合の合理的な期間の無給社会奉仕休暇
- 12か月以上勤務している従業員を余剰人員削減のために解雇する際の余剰人員整理手当。手当の金額は、従業員の勤続年数に基づき決定
最低賃金ベースと最低上乗せ賃金比率、違約金率その他の権利は全国最低賃金と労使裁定に規定されます。
不当解雇
フェア・ワーク法は、適格従業員に対し、使用者の解雇に際して、解雇が過酷(harsh)、不公平(unjust)または不合理(unreasonable)であったことを示せ た場合に、不当解雇に関する不服申立ての権利を保障しています。
従業員15人以下の小規模事業者であって、解雇規則 (Code for dismissals)を遵守している者は、不当解雇禁止法制の対象とはなりません。さらに、従業員は、以下に該当する場合には保護されません:
- 「最低雇用期間」にわたって勤務していない場合 (小規模事業者の従業員は12か月、その他の場合は6か月)
- 有期労働契約により、または特定の職務のために雇用された従業員
- 短期臨時雇いの従業員
- 特定の期間のみ雇用された見習い従業員
- 季節労働者
解雇が「真の余剰人員整理」のためである場合にも、従業員は不当解雇を主張することはできず、また、高所得基準額(2018年7月1日より14万2,000ドル)を超えている従業員も、労使裁定または労働協約の対象となっていない限りは保護されません。この基準額は、毎年7月1日に調整されます。
フェア・ワーク法には、使用者が従業員(または従業員となろうとする者)に対して、人種、宗教、性的選好、妊娠の事実または年齢といった従業員の属性を理由とする不利益行為を行う職場での差別に関する条項もあります。
職場の安全衛生
職場における安全衛生に関する法律は、就業中の従業員の安全を守るための義務をすべての使用者に課しています。ビクトリア州と西オーストラリア州以外の大半の法域では、職場における安全衛生に関する法律がオーストラリア全土で一貫したものになるよう取り組まれてきました(ただし、州ごとに異なる部分は依然として存在します)。
従業員関連の税制
2000年7月1日より、オーストラリアではPAYG(pay-as-you-go)制度という源泉徴収制度が導入されました。このPAYG制度により、使用者は従業員に支払う報酬から税金を源泉徴収し、定期的にオーストラリア国税庁に納付することが義務付けられています。源泉徴収される金額は、国税庁長官の定める税率表に従って計算されます。
雇用に伴って従業員に提供される一定のフリンジ・ベネフィット(付加給付)については、使用者がその価値に応じたフリンジ・ベネフィット税を支払わなければなりません。フリンジ・ベネフィットの定義は幅広く、様々な特典、サービス、便益などが含まれ、例えば、社用車の私的利用、無金利または低金利融資、宿泊施設の提供などが含まれます。
ペイロール税は、州税であり、給与賃金の総額が所定の金額を超えた使用者に対し、その総額に応じて毎月課せられる税です。税率は、州によって異なります。
通常、使用者の月額支払い賃金の総額が一定レベルに達すると、州が使用者に登録を義務付けます。
退職者年金
連邦法は、使用者に対し、各従業員のために所定の最低限の退職者年金積立金を支払うことを義務付けています。現行法のもとでの拠出率は従業員の名目的収入(ほとんどの従業員にとって通常の勤務時間の就労に対する給与額を指します)の9.5%に設定されています。使用者がこの最低限の積立てを行わない場合には、使用者に退職者年金保証金(Superannuation Guarantee Charge)を支払う義務が生じます。これは損金算入することができません。
また、従業員のための退職者年金積立金拠出額については、使用者の税額控除に上限金額が設定されています。