最終更新時: 2018年10月

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導入

オーストラリアでは、個人事業主、パートナーシップ、合弁事業、信託あるいは法人として事業を営むことができます。外国企業の場合は支店を設立する選択肢もあります。各形態に応じて、会社法、契約法、業界毎の法規制やコモン・ローといった異なる法制が適用されます。

外国企業は、支店の設立あるいはオーストラリアの子会社を通じて事業を行うことができます

個人事業主/自営業者

個人事業主(sole trader)として事業を営むことは比較的簡単で、個人とは別個の法人格は存在しません。それゆえ、個人事業主は、事業の過程で生じた全責任を個人で負わなければならず、事業から生じた所得は個人事業主個人の税率で課税されます。

他のビジネス・ストラクチャーと異なり、個人事業主だけを規制する特別な法令はありませんが、個人事業主は自らの事業に関連する法令を遵守する義務を負う場合があります。

パートナーシップ

2人以上の個人または法人は、パートナーシップとして事業を営むことができます。パートナーシップ(特定の専門職のパートナーシップを除く)は、パートナーが20人までという制限があります。

パートナーシップの大半は、法令に従い、パートナー間の権利義務を規定するパートナーシップ契約によって成立します。パートナーシップは、構成員と別個の法人格を持つものではなく、パートナーシップの資産は、合有により、またはパートナーシップ契約で定められた比率で、パートナーが保有します。

パートナーは、パートナーシップの利益をパートナー間で分配し、それぞれがパートナーシップの債務について連帯して責任を負うことになります。しかしながら、オーストラリアの一部の州では、一部のパートナー(すべてのパートナーは不可)が自己の出資額の限度でしか責任を負担しないリミテッド・パートナーシップを組成することも可能です。ただし、有限責任のリミテッド・パートナーは、リミテッド・パートナーシップの経営に関与することができません。

パートナーシップは、主としてオーストラリアの各州法、コモン・ローおよび契約法によって規律されます。

合弁事業

2人以上の個人または法人は、合弁事業を営むこともできます。合弁事業は、各参加者は別個の事業体であり続けながら、複数の当事者が、同一の戦略的目標に向かって活動するために契約を締結して協働して事業を行う形態です。合弁事業は、しばしば特定のプロジェクトまたは事業上の目的のために組成される、または、各参加者の投資の種類、金額、タイミングが異なるという点で、パートナーシップと異なります。合弁事業では、通常、合弁事業の終了のタイミングが規定されます。

合弁事業は、法人化され、構成員とは別個の法人格を持つ場合もあれば、(純粋な契約上のアレンジメントにとどまり)法人化されない場合もあります。合弁事業の各参加者の権利義務は、当該合弁事業の組成条件によって定められます。パートナーシップと法人化されない合弁事業の重要な違いは、後者の場合、構成員は合弁事業の収益や成果物全体について共同して享受する訳ではないという点です。そのため、たとえば鉱物に関する合弁事業(非法人)の場合、各構成員は鉱物資源について契約上定められた持分割合を有することになり、その後その鉱物を市場で販売することになります。

合弁事業は、コモン・ローおよび契約法によって規律され、法人化された合弁事業の場合は会社法によっても規律されます。

信託

信託は小規模なビジネス、特に家族で営む事業において広く利用されています。受託者は、信託受益者のために、信託財産を所有し、事業を営みます。受託者は、信託の債務を履行する責任を負いますが、通常はこのような信託の債務を履行する際に、信託財産に対して償還請求権を有します。受益者の権利は、信託の規定によって定められます。信託受益者が受け取る分配割合は、固定される場合もあれば、受託者の裁量により変動する場合もあります。信託は、コモン・ローおよび契約法によって規律されます。

管理型/集団投資スキーム

オーストラリアでは、集団投資ビークルを、管理型投資スキーム(managed investment scheme)と呼んでいます。管理型投資スキームは会社法で定義されており、一般的には、複数の投資者が資金を提供し、その資金を金銭的な利益その他の便益を得るといった共通の目的のためにプールする投資用の仕組みです。各投資者は投資スキームの日々のオペレーションに関与せず、業務執行者(responsible entity) が投資スキームを運営します。

管理型投資スキームは幅広い投資を対象としています。オーストラリアで一般的な投資スキームは不動産投資信託(REIT)で、各投資者は、REITに資金を拠出して、REITが個人では投資できないような商業不動産などの不動産を取得します。REITは企業が運営し、運営企業が投資対象不動産を選定します。REITには、産業用不動産、オフィスビル、ホテル、テーマパークといった特定の分野に特化しているものもあります。

オーストラリア法人

法人は、法人の名義で資産を保有する権能を持つ別個の法人格であり、自己の債務について責任を負います。オーストラリア法人の主要な形態は、非公開会社(proprietary company)と公開会社(public company)です。公開会社はオーストラリア証券取引所に上場する場合もあります。非公開会社は、非従業員株主数が50人までに制限され、オーストラリア国内で一般投資家から資金を調達することが禁じられています。他方、オーストラリア国内における各種の規制という観点からすれば、非公開会社はより簡単で廉価に運営できる形態です。

オーストラリア法人は、オーストラリア国内の登録事務所、オーストラリア在住の取締役(公開会社の場合には2人、非公開会社の場合には1人)、そしてオーストラリア在住の秘書役(secretary)(非公開会社の場合には任意)を設置することが必要です。

オーストラリア法人には、株主の居住地に関する制限や、最低資本金の規制はありません。

会社は、取締役によって経営され、株主(shareholders)(社員(members)とも呼ばれます)によって所有されます。オーストラリア法と実務は、取締役と株主間の所有と経営の分離の原則に従っています。

取締役は、会社の日々の事業および運営について監督します。取締役は、善管注意義務をはじめとして、コモン・ローまたは制定法上の様々な義務と責任を負います。これらの義務を履行しなかった取締役は、刑事訴追の対象となる場合があります。また、これらの義務は、会社の登録抹消後も継続する場合があります。

株主の株主総会における一般的な権利として、取締役の選解任、定款変更、資本構成の変更、清算などの特定の事項の決定権があります。

取締役の主要な義務は、会社の最善の利益のために行動することです。ただし、会社が債務超過の状態にあるとき、または債務超過の疑いがあると考えられる合理的根拠があるときには、取締役の義務は会社の債権者に対しても拡張されます。このような状況下においては、取締役は、会社が取引を行い更なる債務を負うことを防止する義務を負います。債務超過時の取引に関する会社法の規定に違反した場合、取締役は民事上および刑事上の責任を負うことがあります。

現行法下では、労働者代表を取締役として選任する義務はありません。

オーストラリア法人は、会社法、設立関連書類、およびコモン・ローによって規律されます。

わずかな例外はありますが、会社法上、オーストラリア法人は通年の財務諸表ををASICに提出することが求められます。財務諸表は、会社法と会計基準に従って作成されなければなりません。

外国法人

外国法人は、オーストラリアの支店を通じて、あるいはオーストラリアの子会社を通じて事業を営むことができます。外国法人が、オーストラリア支店を通じて営業する場合は、ASICに外国法人として登録しなければなりません。外国法人がオーストラリアで事業を営んでいると認定されるか否かは、一定の法的判断枠組みにより決定されます。外国法人は、例えば、裁判手続の当事者になる、取締役会または株主総会を開催する、銀行口座を開設する、何らかの財産を保有するなど、一定の活動をオーストラリアで行ったという理由のみによって、オーストラリアで事業を営んでいると認定されるわけではありません。

ASICへの登録を希望する外国法人は、オーストラリアで希望する会社名を使用できるよう会社名を確保する手続を行うことが推奨され、申請書に設立証書および設立関連書類の認証済み謄本を添付して、ASICに提出しなければなりません。提出文書に英文でないものがある場合、当該文書の訳文も提出する必要があります。

また、外国法人は、オーストラリアに登録事務所を構え、オーストラリアで法人を代表する代理人を指名しなければなりません。外国法人は、一旦登録すると、財務諸表の写しを提出することや、会社法に従って様々な通知を行うことが義務付けられます。登録を行った外国法人は、(役員や登録住所の変更のような)法人情報の変更があった時には、ASICに通知しなければなりません。外国法人がオーストラリアで事業を行わなくなった、清算した、解散した、設立国で会社登録を抹消したといった場合にも、ASICに通知を行わなければなりません。

外国法人は、新たな会社をASICに登録することにより、オーストラリア子会社を設立することができます。

商号

ASICは、すべてのオーストラリアにおける事業について、商号の登録、更新および管理を所管しています。オーストラリア国内で(個人の名前や自己の会社名以外の名称で)事業を行う場合、ASICの商号登録システムに商号を登録することが義務付けられています。

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